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zoom RSS オールモスト・フラットヘッドのコンセプト

<<   作成日時 : 2011/08/11 15:14   >>

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予告の際に「オールモスト・フラットヘッドの秘密」などと仰々しいタイトルをつけてしまいましたが、もしもトニーが生きていたらいつものように、「秘密でも何でもない。だって、(現物を見れば)答えはあなたの目の前にあるのだから」って言うのかもしれません。と言うものの、実際には、現物を目の前にしてもさっぱり分からないんだなぁ〜、これが。 トニーの解説でようやく「なるほど」と分かったので、今日は皆さんにもご紹介しますね!



★前の記事「オールモスト・フラットヘッド誕生までの歩み」をまだ読まれていない方は、そちらを先にお読みください。


まず、簡単におさらいしましょう。


2006年のIBMAで、『ブルーグラス・ウディ・フラットヘッド』と、(新たに作った)『ブルーグラス・ウディ・アーチトップ』の両方を来場者に試奏してもらい、感想を聞いた結果、トニーは、両者の良いところを1つのリムで実現しようという新たなプロジェクトに着手した、というところまで話は進みました。


で、その両者の良いところというのは、 『ブルーグラス・ウディ・アーチトップ』のクリーンでクリアな音と、『ブルーグラス・ウディ・フラットヘッド』の低音でした。


トニーはまず、両者の違いを比較観察しました。


一目瞭然なのは、ヘッド上の、振動面積の差です。振動する部分は、ヘッドの直径11インチ(約279.4ミリ)のうち、フラットヘッドで10 13/16インチ(約274.6ミリ)、アーチトップで9 1/2インチ(約241.3ミリ)。

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この振動面積の差だけでも両者の音に違いがあることの説明にはなるけれど、相違点は他にもあり、トニーが考える最も顕著な違いは、ヘッドとトーンリングの“離れ方”なのだそうです。


フラットヘッドの図を、もう1度ご覧ください。ヘッドは、ストレッチャーバンドから上方へ向かい、クラウン部に接触すると、その丸みに沿ってA点までトーンリングと接触し続けます。そして、A点からはトーンリングを離れ、10 13/16インチ先で、反対側のクラウンと再び接触します。


A点からの、ヘッドとトーンリングの離れ方に着目してみると、トーンリングがなだらかに下降しているため、ヘッドとトーンリングは徐々に離れていきます。


一方、アーチトップの場合は、ストレッチャーバンドから上方へ向かったヘッドは、トーンリングの2つのリブ(梁のようなでっぱり)のうちの、外側のリブとまず接触します。そこから15度の角度で上昇しながらトーンリング上を3/4インチ(約19.1ミリ)進み、内側のリブに接触すると、B点でトーンリングを離れ、9 1/2インチ先で、反対側のリブと再び接触します。


アーチトップでは、トーンリングの内壁がストンと真下に落ちていて、B点はシャープなエッジとなっています。そのため、ヘッドとトーンリングはB点から一気に大きく離れることになります。



この両者の違いに注目したトニーは、(フラットヘッドの)広い振動面積と、(アーチトップの)シャープなエッジを組み合わせたらどうなるだろう、と考えるようになりました。そして、その方法として、アーチトップの2つのリブの間隔を無くす、つまり、内側のリブを外側のリブの位置まで移動させて、アーチトップの振動面積を10 5/8インチ(約269.9ミリ)まで広げることを思いついたのです。

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結果に非常に満足したトニーは、タートルヒル・バンジョーのデイブともう1人の友人にリムを試してもらいました。(両者の所有する『ブルーグラス・ウディ・フラットヘッド』バンジョーと比較テストを依頼しました) すると、すぐにデイブから連絡がきました。「組立て直後なのに、ものすごいよ。『ブルーグラス・ウディ・フラットヘッド』より、クリーンで、クリアで、歯切れもいい。それに、低音の反応も素晴らしい」と。もう1人の友人からの反応も、デイブと全く同じだったそうです。


新たなウディの名前に関して、当初トニーは、「振動面積が広くなったアーチトップだから」ということで、『Extended Archtop』にしようと考えたそうです。しかし、アーチトップという名のせいで敬遠する(興味を持たない)プレーヤーが出てくるかもしれないというデイブのアドバイスを受けて、(より人気のある)フラットヘッドの新タイプということを理解してもらえる名前を考えることにしました。トニーは、「えっと・・・このリムは、(振動面積が、通常のフラットヘッドに比べて)ほんのわずか小さいだけで、ほとんどフラットヘッド(almost a flathead)なんだから・・・」と考え、結局、それがそのまま『オールモスト・フラットヘッド』という名前になっただそうです。


********************************



いかがでしたか? 『オールモスト・フラットヘッド』について、少しでも理解を深めていただけたでしょうか。


私が「トニーはすごい!」と思うのは、彼が考案したアイディアは、すべて実用性が高く、無駄がない(最小の変更で最大限の効果を得る)ものだからです。世の中には、発想は豊かでいろいろなものを発明するけれど、(表現は悪いですが)使えないものばかり作ってる人もいますよね。 この点は、トニーが、趣味の発明家ではなく、職業エンジニアであったことも影響していると思いますが。。。 もしも彼が、この業界にあと10年いたら、何か全く新しいものを作ってくれたのかもしれないし、やはりここで「やり遂げた」ということになったのかもしれないし。。。 誰にも分かりませんね。


『オールモスト・フラットヘッド』に話を戻すと、病状が悪化する中、トニーがこの原稿を書いたのは、こんな思いがあったからです。


「開発後、IBMAで数年間、この『オールモスト・フラットヘッド』バンジョーを展示したところ、結果は大成功で、以降、ウディの中で最も人気が高く、売上も(ウディの中で)1番のリムとなりました。それなのに、ウディの中で最も知られていない、というのも実情です。たまにネット上で話題にあがると、聞いたこともないというプレーヤーがいるし、もっと知りたいと言ってくれるプレーヤーもいる。この記事が、皆さんの疑問への答えとなり、誤解をといてくれることを願っています。」


トニーはやんわり書いていますが、ネット上には、悲しいかな、悪気は無くても的外れで無責任な悪評価(正しい方法で使用していないことに起因する問題、etc.)や、意図的に情報操作しようとするコメントが溢れています。バンジョー・ハングアウトも、良い面と悪い面があって、トニーにしても、根拠のない情報、あるいは間違った情報をもとにリムを悪く言われたことがウンザリするほどありました。この原稿(その一部が、バンジョー・ニュースレターの記事となりました)は、自分のリムを正当に理解してもらうために、彼がどうしても書き残しておかなければならなかったものでした。


残念ながら、さらなる質問にズバリと答えてくれるトニー本人はもういません。でも、あとは、皆さんに実際に弾いて判断していただきたいと思います。もちろん、すべての方に『オールモスト・フラットヘッド』をお勧めしているわけではありません。やはり金属トーンリングの音のほうが好き、と判断される方がいらっしゃって当然だと思いますし、デザートローズ・バンジョーから金属トーンリングが消えるわけでもありません。


でも、これまでにも何度かトーンリングを変えてきたのに、「まだ求めている音とは違う」と言って、さらに変えることをお考えの方は、一度試奏してみる価値はあるのではないでしょうか。もしかしたら、捜し求めていた何かが、この『オールモスト・フラットヘッド』にあるかもしれませんよ。


東京のイベントで試奏し、即オーダーしてくださった方は、「これまでも、転換期となった衝撃的なバンジョーとの出会いがありましたが、今回の『オールモスト・フラットヘッド』も、同じような印象を持っています」とおっしゃってくれました。また、噂を聞いて先月松本までわざわざ試奏しに来てくださり、即決オーダーしてくださった方は、「金属トーンリングの時代が終わったというまさにエポックメーキングを目にした感があります」とおっしゃってくれました。


このブログを読んだだけでは「そんな大げさな」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、5月の展示会で、信じられないという様子で試奏していらっしゃったプレーヤーの方々の表情を拝見していると、皆さん、少なからず、何らかの衝撃を感じていらっしゃったご様子でした。あれはきっと、「バンジョーの肝はトーンリング!」という固定観念が少々ゆらいだ衝撃だったんじゃないでしょうか。(違う?


10月のサウンドメッセ・イン・大阪にも、『オールモスト・フラットヘッド』を使ったシルバラードを持っていきますので、ご都合のつく方は、ぜひご来場くださいね〜!



<お知らせ>
小さな声でお知らせです。
本来なら、皆さんをサウンドメッセに招待したいくらいなのですが、現実的には難しいので、ご希望の方には割安な入場券をお譲りしたいと考えています。(用意した枚数があまり多くないので、先着+バンジョー弾き限定とさせていただきます) 

注:「シルバー割引」が適用される方は、うちから入手する必要はありません。

サウンドメッセ・イン・大阪、チケットのご案内








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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
う〜ん、なるほどー!よーく分かりました。以前より、スコットさんと話していて、どうしてプリウォーギブソン・アーチトップ・トーンリングは、ヘッドの振動面積が狭いのにこんなに良い音がするのだろうと思っていたのですが、解決しました。Thank you Tonny!それと、以前にも書きましたが、アーチトップの方が、フラット・ヘッドより、木の部分(リム)が多いので、よりWoodyな音がするのだと思います。

2011/08/11 16:19
フラットヘッド・トーンリングと、アーチトップ・トーンリングは、これまで万人の目の前にあったというのに、ここに着目して、1つの形に仕上げる人間がこれまで出てこなかったというのが、むしろ不思議なくらいですね。

2011/08/11 16:31
私には両方の利点を一つにする方法なんてどうすればてそんなことが可能かとても関心がありました。説明を読みながらひとつひとつ丹念に検討して、不可能を潰していくと、だんだん見えてくるんですね。ある意味プリウォーの壁を破った革新的な技術だと思います。
こばやし
2011/08/11 19:36
感傷的になるのはこの記事を最後にしようと心に誓っていますが、彼の原稿を読み、この記事を書いている間中、トニーが短期間にやり遂げたことの偉大さと、バンジョーの世界にとって強力な助っ人が逝ってしまったという現実を改めて思い知らされ、メソメソしていました。

彼の最後のメッセージを、日本のバンジョー・プレーヤーにうまく伝えられるか、実はかなりナーバスになっていたのですが、こばやしさんや稲さんのコメントを拝読して、少し肩の荷が下りた気がします。お2人のバンジョーに組み込まれているシンスカートリムも、彼が考え付く限りのアイディアを注ぎ込んだリムです。今後もずっとご愛用いただければ、トニーも喜ぶと思います。
R
2011/08/11 20:10
トニーさんが、もともとバンジョーに関しては全くの新人であったことが、プリウォー・ギブソンを超える革命に達したのではと思います。世の中には、素晴らしい技術を持った技術者や職人さんがおられますから、第二のトニー・パスがいつか現れることでしょう。

2011/08/11 21:26
almost flatheadの形状でtoneringを作りトニーパスのwoodrimと組み合わたらどんな音になるかと考えるのは小生だけでしょうか?
日光のBanjo弾き
2011/08/12 09:32
日光のBanjo弾きさん

興味のあるところではありますが、どなたか、時間とお金のある方、ぜひやってみてください。(笑)
R
2011/08/12 10:16
稲さん

確かに、トニーが最初のブロックリムを試作したときには、バンジョーの構造に関してはほとんど知識がなかったようです。(笑)タートルヒルのデイブが追悼文の中でこう述べています。「皮肉なことに、トニーはリムの仕事をするつもりなど全くありませんでした。ただ、バンジョーに興味を持ち、バンジョーの構造については何も知らなかったにも関わらず、自分が手に入れたステリングバンジョーに、もっと良いリムを作れるのではないかと思っただけだったのです。」 なんだか楽しいエピソードです。

トニーはバンジョーに関して素人でしたが、彼の人柄ゆえに、周囲には協力を惜しまない人間が大勢いましたし、そうした人たちや一般のプレーヤーからの意見に耳を傾け、改善すべき点があれば、改善のための努力を惜しまなかった、というのがこの結果に結びついたと思います。

2011/08/12 14:19

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