デザートローズ・バンジョー

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zoom RSS ネックとポットの隙間(3)

<<   作成日時 : 2011/01/06 12:39   >>

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前回、この隙間の是非はアメリカで大議論になった、という話をしました。「ここに隙間があると、ネックの強度に欠ける」と主張した人たちをトーンダウンさせた「ある事実」とは何だったと思いますか?


確かに、あの部分(前回の緑の円で囲った部分です)がきちんと密着していれば、ネックは3個所でポットに接するわけですから、強度は高まるかもしれませんね。


でも、でもですよ・・・もしもあそこに隙間があると、本当にネックの強度は失われ、たとえば、数年後に折れてしまうなんて惨事につながるのでしょうか・・・ 






いいえ、必ずしもそんなことにはなりません。



それを証明したのが「ある事実」なんです。



実は、戦前に作られた、いわゆるプリウォー・ギブソンの中には、ここに隙間があるものが少なくないんだそうです。当時はわざと隙間を作ったわけではありませんが、フィットの問題で偶然隙間ができてしまったものが、半世紀以上、ちゃんと無事なまま残っているわけです。




所有していらっしゃる方も少なくないと思いますが、Gibson's Mastertones: Flathead 5-String Banjos of the 1930s and 1940sという本があります。

画像




宣伝文句によると、戦前に作られた何千ものギブソン・バンジョーのうち、「フラットヘッド・トーンリング+5弦ネック」のものはたった250本程度とのことですが、数少ない現存するものの中でも特に有名な19本がこの本で紹介されています。画像からでは隙間があるか判断できないものもありますが、紙1枚が入りそうな隙間〜明らかな隙間まで、「これは絶対に有る!」と思えるのが何本かあります。(この本を持っている方、どうですか〜?)



中身をご紹介できなくて残念ですが、表紙を飾っているバンジョー( Snuffy Jenkins の RB-4 )にも隙間があります。(現物の本だと分かるんですが、この画像だとどうかなぁ。。。)


画像




まあ、70年も事故なく持てば、ネックの強度は十分じゃないでしょうかね。  


ただし 密着すべき所はちゃんと密着している ことが絶対条件ですよ〜。上のほうで、必ずしもと書いたのも、この前提があっての話だから、です。


画像をご紹介しようか迷っているところですが、例のピンク線で示した肝心な部分に隙間ができてしまっているバンジョーって結構多いんです。 工場から出荷された状態のままのものでも(ピンク線のところに)隙間があることもあります。が、ご自分でネックやトーンリングなどのパーツを換装して、「パーツ・バンジョー」(さまざまなパーツを寄せ集めて組み立てたバンジョー)になってしまっている場合は、特に要・要・要注意で、そのまま何もせずにOKというのは皆無に近く(注)、ほとんどのケースで何らかの手当てが必要です。セットアップなさった方のバンジョーで問題があった場合は、ご報告して――特にここ2年ほどはかなり細かくご報告しております――手当てをしておりますので、該当者の方はよくご存知だと思います


   注:問題というのは、「隙間」とは限りません。
     「弦高が異常に高かったり、低かったりする」
     とか、「弦の位置が右か左に偏る」等々、
     プレイアビリティに関連したものであることも
     あります。
     そうした不適合を、コーディネイターロッド等で
     無理に調整しようとすると、どこかに悪い
     影響が出ることもありますので、十分に気を
     つけてくださいね。


ちなみに、デザートローズ・バンジョーを製作する場合、ネックにボルトを入れる位置を決める作業は、1点、1点、組み立てるポットと実際に合わせて行っています。(助手が必要なので、いつも私がミニハンマー持って手伝ってま〜す)  設計図に従って端から何ミリのところにボルトを入れる・・・なんていうふうにやっているわけではないんですよ。だから、「ネックだけ作って、送ってください」というオーダーは、申し訳ありませんがお受けできません。 必ず、組み立ての段階でポットを送っていただく必要があります。


ちょっと脱線しましたが、上記のGibson's Mastertones: Flathead 5-String Banjos of the 1930s and 1940s、全部英語ですが、貴重な写真がたくさん載っているので、眺めているだけでも楽しいですよ。IBMAで買って、わざわざ日本まで運んできたのに、日本のアマゾンでも買えます。しかも、スコットが買ったのより安いし・・・(涙)  うちでアメリカから取り寄せても赤字になるだけなので、欲しい方はご自分でどうぞ〜。



 Gibson's Mastertones: Flathead 5-String Banjos of the 1930s and 1940s










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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
ピンクの部分のアングルがあるため 隙間が必ず開くのですね。ネックジョイントの隙間に規定値は無いということですね。ブリッジの高さによってもピンクの部分が余ったり、足りなくなったりして。昔カスガRB800をいじっていて、ネックがフープを押さえ込んでヘッド交換の際、フープが外れないという経験があります。
柴又
2011/01/06 22:19
その本欲しいなーです。
昔、ロストシティー・キャッツでアメリカへ行った時、あのランディー・ウッドが私の持っていった「RB−250」を診て、ネックと本体をもっとタイトにした方が良いと言って、直してくれましたが、この事だったのですね。

2011/01/07 01:03
柴又さん

>ピンクの部分のアングルがあるため 隙間が必ず開くのですね。

ちょっと誤解させちゃったかな。説明が分かりにくくてすみません。アングルがあるように見えますが、ピンク線の部分はあれでちゃんと隙間ができないように設計されてるんですよ〜。(注:セットアップで種々のメーカーのネックを拝見してきましたが、アングルがあまりついていないように見えるカットのネックもありました。) 

その前の部分(テンションフープに接する部分)も、本来は接するように設計したんじゃないでしょうか。だけど、これもさまざまな理由から、偶然隙間ができてしまうものもあれば、反対に、テンションフープのどこかに突っかかっているものもあるようです。

> ネックジョイントの隙間に規定値は無いということですね。

仮にネックが判を押したように同じでも、ポット側が微妙に異なる可能性もあります。(たとえば、トーンリングとリムに段差があって、ネックが綺麗に密着しないようなケースも実際にありました) なので、スコットは「そのネック」と「そのポット」の組み合わせでベストな位置になるようにしているのだと思います。量産の現場ではそこまでやっていると思いませんが・・・

写真をお見せすれば私の言いたいことが一発で分かると思うのですが、スコットのセットアップの肝の1つだと思うので、一般公開はちょっと・・・ね。

R
2011/01/07 11:47
字数制限にひっかかってしまったので、続きです。

> ブリッジの高さによってもピンクの部分が余ったり、足りなくなったりして。

個人的には大勢の方に話してきましたが、メーカーによって、使用するブリッジの高さが決まっています。その高さを想定して組み立てられているので、それ以外の高さのブリッジを使うと、おっしゃるように、どこかにしわ寄せが出てしまうことがあります。本来と違う高さのブリッジを使い、コーディネイターロッドのみで何ミリも弦高を変えるのはお勧めできません。リムが卵型になってしまったり、100パーセント密着してもわずかしかないネックとポットの接触面がさらに小さくなってしまいますからね。

>昔カスガRB800をいじっていて、ネックがフープを押さえ込んでヘッド交換の際、フープが外れないという経験があります。

まさしく、きつ過ぎる例ですね。 


2011/01/07 11:49
稲さん

記事の最後にある Gibson's Mastertones: Flathead 5-String Banjos of the 1930s and 1940s をクリックすれば、日本のアマゾンのHPにリンクしていますから、簡単に買えますよ〜。


2011/01/07 11:54
ある事実はわかりませんが、戦前に作られたバンジョーのネックが強度を証明しているんでしょうか?
コーディネイターロッドの密着度と締め付けのお話を聞いているとコーディネイターロッドはバンジョーにとって繊細な部分なんですね。
こばやし
2011/01/07 20:28
こばやしさん

またもや分かりにくかったようでスミマセン。戦前に作られ、現存しているバンジョーの中に、(正面から見たときの)ネックとポットの間に隙間があるものがけっこう有る(しかも、有名なプリウォー・バンジョーにも多い!)というのが「ある事実」で、この事実が指摘されてたことによって、「そこに隙間があるのはよくない」と主張する人たちの主な根拠である「ネックが折れるなどの事故につながるから」というものに説得力が無くなってしまった、ということなのだそうです。

もちろん、他の「密着すべきところ」が密着していない上に、ここに隙間があれば、それはネックにとって危険です。「音的に有利そうだから」といって、ここに隙間を作ろうとした結果、密着すべきところに隙間ができてしまったら本末転倒、かえってマイナスになってしまうかもしれません。

> コーディネイターロッドはバンジョーにとって繊細な部分なんですね。

コーディネイターロッドに対する考え方も、過去とは大きく変わってきたことの1つだそうです。コーディネイターロッドの仕組みが導入されたときには、確かにこれで弦高を変えることも意図されていたのですが、その後、より良い音を求める中で、そして、バンジョーの音に対する流行が変わってくる中で、コーディネイターロッドを下手に使うと音的にも構造的にも損をする、という考え方が主流になってきたのだそうです。

皆さん、するどい突っ込み、ありがとうございます。そういうことで、議論が深まれば幸いです。
R
2011/01/08 09:40
RB-3のsetupありがとうございました。
コーディネイターロッドの話が出たので関連して質問です。コーディネイターロッドを下手に使うと音的にも構造的にも損をするのであればロッド自体を無くしネックとリムはRB-100なんかの様にナットで固定ではだめなんでしょうか?必ずしも2本なければいけないようには思えないのですが?
okuzoo
2011/01/08 22:43
okuzooさん

こちらこそ、セットアップをご依頼いただきまして、ありがとうございました。調子が良さそうで嬉しいです。

早速スコットに聞いてみました。おっしゃるとおり、必ずしも2本でなければいけないということはないそうです。(仮に、シングルコーディネイターロッドのバンジョーの持ち主から、「2本に改造したほうがいいか?」と聞かれたら、むしろオリジナル性を留めておくことのほうをお薦めするるだろう、と言っています。) 1本でも、即「ダメ」というわけではない。けれど、弦が引っ張る力に対抗するためには、コーディネイターロッドが2本あったほうがベターであることは間違いない、との考えです。

良い機会なので、過去にも何度かふれた「弦高調節にコーディネイターロッドを使うのはよくない」というコメントに補足をさせてください。

コーディネイターロッドに不自然な力がかかっていない理想的な状態にセットアアップされているバンジョーであれば、コーディネイターロッドを使って、弦高をプラスマイナス0.5ミリくらい調節しても、音への影響は全く心配する必要がないそうです。(ですので、スコットがセットアップしてお返ししたバンジョーは、その程度にはコーディネイターロッドを使っていただいても問題はありません) 

ただ、

(1)「少しなら使っても大丈夫」という言葉を、このブログを読んだ方がどう拡大解釈するか分からない
(2)皆さんのバンジョーの現状が分からないので、コーディネイターロッドが今どういう状態なのか分からない

ということがあって、不特定の方には「コーディネイターロッドは使わないほうがいい」とお話しておくのが安全、と考えています。

2011/01/08 23:52
勉強になります。それぞれの生い立ちを基本に、使用条件で良くも悪くも育てることが出来る。常日頃の話では弦高が下がってきたかなと思うとヘッドを締めるという感じでやってます。ヘッドを締めるのはいまだに怖いのですが。しかしこれも、基本のセットアップが十分に出来ている状態だから可能なのでしょうね。弦高って微妙にこだわりますよね。
柴又
2011/01/09 23:20
柴又さん
「弦高が下がってきたかなと思うとヘッドを締める」とは、私にとって初めて聞いた事です。参考になります。最近は、スコットさんの教えに従って、ライブがある度に、ヘッドを軽ーく締め直していましたので。その結果は、録音してみると分かるのですが、レスポンスやマイク通り等は、確実に改善されますね。

2011/01/10 06:35
柴又さん、稲さん

貴重なコメントありがとうございます。きっと「なるほど」と思って読んでいらっしゃる方がいると思います。

お二人のコメントはスコットに伝えたところ、頷きながら聞いていました。「唯一の“これが正しい”という方法なんて無く、その人にとってうまく機能する方法なら、それは正しい方法。最終的に『より良い音になったかどうか』を判断する[判断できる]のは、本人なんだからね」と付け加えていましたよ。
R
2011/01/10 10:20
>それぞれの生い立ちを基本に、使用条件で良くも悪くも育てることが出来る。

皆さんとスコットの橋渡しをしていて常に感じていることですが、柴又さんのコメントを読み返していて、改めて思いました。「楽器(特にアコースティック楽器)は人間と同じ」と考えれば、多くの疑問は自然に解けるのではないか、と。

未熟児で生まれて来た子供でも、オリンピック選手になるかもしれない。。。 

知り合いのバンジョーを弾かせてもらったら、すごく良い音がしたので、同じモデルのバンジョーを購入したり、同じトーンリングに換装しても、即、同じ音を手に入れられるわけではない。。。。

なら、usedで買うのは、誰かにある程度育ててもらった子供を養子にとるようなものかしら?


2011/01/10 10:55
稲さん
お恥ずかしい。参考になれば幸いです。でも、ヘッドの締め具合は貴重ですね。
used 〜今まで上手に賢く育ててもらっていた子どもさんを私は、悪の道に。。。反省しなあきませんね。
柴又
2011/01/10 19:51
柴又さんが毎日可愛がってあげているの、よ〜く知ってますから。

2011/01/10 20:08

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