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zoom RSS 「たかがナット」と言うべからず!

<<   作成日時 : 2010/03/26 17:47   >>

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セットアップの受付がなかなか再開できずにすみません。待ったの利かない修理絡みのご依頼はどうしても入ってくるので、お預かりしているバンジョーで今も部屋が満杯です。 セットアップご希望の方はもうしばらく待っててくださいね。


セットアップで多くのバンジョーをお預かりしてみると、驚くことやら興味深いことやらネタの宝庫なのですが(笑)、このブログを読んでくださっている誰かのお役に立つかもしれないことを、時々紹介していこうと思います。


今日は、ナットです。「ナットなんて、溝が4本入ってりゃそれでいいんじゃないの?」と思っていらっしゃる方も多いのでは? 先日、あるバンジョーの、予定していたオーバーホール作業が終りかかった頃、スコットからお客様に連絡してほしいことがあると言われました。「できれば、ナットを交換したほうがいい」と言うのです。


ナットの溝が浅い(←スコット曰く、「まるで、ちょこっと引っかいただけって感じの溝」)のだけれど、これ以上深く入れると弦がフレットに接触しやすくなる。そもそもナットの高さ自体が不十分、なのだそうです。



自分で理解・納得できないことはお客様にどう伝えていいのか分からないので、比較のために手近にあったギブソンのネックも見せてもらいました。ところが、ものさしをあてて見比べても、「ナットの高さ、ほとんど同じじゃないの?」という感じなんです。「本当に、交換しなきゃいけないほど差があるのかなぁ」と半信半疑ながら、とりあえず写真を撮ってみました。で、その写真をコンピューターのモニターで見てみると、なるほど、1ミリくらい高さが違います。


画像



もう1度言っておきますが、これってモニターで拡大しているから分かるんですが、肉眼では大して差が無いように見えるんですよ。




さて、ナットの高さが1ミリ違うことは分かりました。でも、それでお客様に「ナットを交換したほうがいいですよ」と言っても了承してもらえるかしら・・・  しかし、そこでスコットが言いました。「問題は、フレットの高さとの関係なんだよ」


そう言われて、別な写真で比較をしてみたところ、なるほど、確かにギブソンに比べて、お客様のバンジョーの場合は、フレットとナットの高さの差が小さい。(・・・というか、ほとんど差がない)



画像



え? よく分からないですか? では、フレットの高さと、溝底の高さで線を引いてみますよ。



画像



赤の線がナット自体の高さで、黄色の線は溝底の高さ(=弦の高さ)、ということになります。こうやってみると、確かにギブソンは弦とフレットの間に余裕があるのに比べ、お客様のバンジョーは今でもスレスレで、これ以上溝を深くしたら、弦がフレットに接触してビビりそうです。お客様には「現状は弦高が高いので、下げてほしい」というご希望があったのですが、逆に言うと、ナットがこの状態では、今まで弦高を高くせざるを得なかったのかもしれませんね。



今回のように、撮った画像をモニターで見て、初めてスコットの言っている意味が理解できることはよくあります。老眼のくせに、すごいなぁ。。。(最近、私も老眼気味。シクシク・・・)  スコットがシャーベル/ジャクソンの日本プロジェクト責任者として日本へ来たことや、レコーディングキングの立ち上げの時に品質設定やチェック等を行ったことはご存じの方もいると思いますが、実はこの他にもいろいろな中小メーカーから依頼を受けてコンサルタント業務をしています。(コンサルタント業務は守秘義務があるので、お話できないんですけどね。レコーディングキングだけは、スコットがプロジェクトに関わったという事実や、その内容に関してもある程度しゃべってもかまわない、という例外的なメーカーなんです)  そんなスコットですから、ナットの溝といった小さなこともダメなものは見逃せないようなんです。たかが小さなナット。そして、パッと見には、適当に入れられているような溝。でも、やっぱりどうでもいいわけではなくて、ちょっとしたことが何かに影響を及ぼしているかもしれませんよ。


スコットはよく「1ミリどころか、0.数ミリで全然違ってしまう」と言います。正直言うと、以前はスコットの言葉をお客様に伝えながらも、「ホントかな〜」と思っている部分もあったのですが、今回のような事例を見ると、「ホントに0.数ミリの世界なのね」と認めざるを得ません。弦高をわずかに上げ下げするためにも、何か1つの要素だけで調節するのではなく、あちこちから0.数ミリずつ稼いだ積み重ねで、バランスよく変えることが大切なんだそうです。(お腹周りがきつくなってしまったズボンを広げる際に、面倒だけど、すべての縫い代から少しずつ幅を出していくのが一番ズボンの形が崩れない方法なのと同じかしらん?


最近、トーンリングの換装絡みで古いリムを2つお預かりしましたが、交換可能とされている同じモダンサイズ系のトーンリングでも、メーカーの異なるトーンリングをのせてみるとフィットがかなり違いました。(*) 測ってみると、トーンリング同士のサイズ差はわずか1ミリとか、それ以下しかないんですけどね。本当に、「たかが1ミリ。されど1ミリ。1ミリを甘く見ちゃダメよ!」なんですね。


   * 昔のプライリムは、リムが楕円形気味だったり、少々不規則な形
     になっていることが多いので、トーンリングのサイズのわずかな差が、
     意外に大きく響いてしまうことがあるようです。



皆様からお預かりしたバンジョーは、すべて同じように細心の注意を払ってチェックしています。とはいえ、「あれも直したほうがいい。これも交換したほうがいい」と言うようなことはありません。お客様のご希望だけでなく、また、そのバンジョーにどれほど再投資する価値があるかということも考慮しながら、「どうしてもここは手を入れたほうがいい」ということや「余裕があるなら、やってみてもいいかも」ということを提案させていただいております。


・・・なんて言っておいて、「セットアップはまだ受付できません」じゃひんしゅくを買うかな。もうちょっと待っててくださいね〜。




<お願い>

最近、ジャンクメールが増加する一方で、皆様からのメールが迷惑メールに混じってしまうと見逃してしまう可能性も高くなってきました。「こんにちは」とか「お久しぶり」ですといった件名ですと、迷惑メールボックスから見つけ出すのが余計に困難なので、件名に「バンジョー」とか「セットアップ」など、一目で見つけやすいキーワードを入れておいてくださいね!

それでも見逃してしまうことや、何らかの理由で不着になることもありますので、こちらからの返信が2日以内になかったら、お手数ですが、もう1度メールを送ってください。よろしくお願いいたします。










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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
Rさん
1mm違えば、大違いです。ましてやナットの高さが1mm違えば、私の感覚では、天と地の違いの様な感じです。テールピースのヘッドからの高さ等は、0.5mm以下の単位での高さ調整をしています。(ただし、ものさしは1mm単位のしか持っていませんが)

2010/03/27 18:18
ホントに最近は、0.数ミリの大きさを痛感しますよ。

> 0.5mm以下の単位での高さ調整をしています。(ただし、ものさしは1mm単位のしか持っていませんが)

0.5mmのものさしがあっても、線が細かすぎて、かえって数値を読みにくいだけですよ。上の写真を見ていただいても分かるように、あえて1ミリ単位のほうを使ってます。きっと、目盛よりも、経験による感覚のほうが、はるかに頼りになるんでしょうね。
R
2010/03/27 19:19
O.数ミリで違いで音の変化が解かるという稲さんもすごですが、スコットさんのナット、フレット、ブリッジまでの高さの音を正確に判断し的確にだす感覚が素晴らし音色の一つの要素になるんですね。そこまで考えたことが無かったので勉強になりました。
こばやし
2010/03/28 11:05
スコットにとっては毎日ごく当たり前のこととしてやっていることなので、今回のような機会が無い限り、私もスコットが何をやっているのか知らずに過ごしています。いまだに驚いたり感心させられることばかりで、スコットの仕事のヘルプはおもしろいですよ〜。

量産モデルとか低価格帯モデルの中には、後にパーツを換装したい時とかセットアップを変えたい時に、限界があるというか、対応し切れないものもあるようなんですが、こんな小さなパーツ1つに対してでも気配りがされているかどうかが、その楽器の可能性(潜在能力)に違いを生むのかもしれませんね。やっぱり、ハイエンドモデルというのは、「こういうふうにセットアップしたい」という要求に応えられるだけの伸び幅を持ち合わせているそうです。

2010/03/28 12:34
Rさん
なーるほど、1mm単位の物差しの方が分かりやすいですね。1mmの1/3位とかで判断も可能ですから。
こばやしさん
おっしゃる通り、私どもアマチュアは、場所限定ではかなり詳しく研究出来ますが、色々な個所のバランスをとると言うのは、やはりスコットさんでないと無理です。これが、まさしくプロの技ですね。

2010/03/28 18:24
稲さん

楽器作りに限ったことではなく、アマチュアは見えているところやこだわるところが断片的で、プロは全体と細部を同時に見ているんですよね。皆さんもご自分のお仕事においてはプロであり、きっと同じだと思います。私の本業も、ホント、そんな感じです。

2010/03/29 02:13
今回も私のバンジョーです。スコットさん、Rさんに迷惑、我ままばかりですいません。異色のバンジョーの為じゃじゃ馬ですが、これからも宜しくお願いします。
本当に楽器をわかってデザートローズさんに預けた安心しています。
うみやま
2010/03/29 09:17
うみやまさん

読んだ瞬間は「?」と思いましたが、そうでした、そうでした。リムの1つはうみやまさんのものでしたね。 同じモダンサイズ系のトーンリングでも、別メーカーのものをのせるとフィットがゆるめだったので、結局今のトーンリングのままでいるほうがメリットが大きいという判断になったんですよね。(ついていたトーンリングが、心配なさっていた時代のものではないことが判明し、安心されたと思いますし) 

前回、隙間を修理したリムの状態は良好でしたので、安心して弾き続けてください。
R
2010/03/29 09:51
Rさん
そうです!昔から、短期戦(局部戦)はプロもトップ・アマチュアには叶わない事があると言います。(ひょっとしたら、私が勝手に言っているだけかも)将棋でも、ゴルフでもそうです。しかし、長期戦(全体戦)では、必ずプロが勝つのです。

2010/03/29 20:07
セットアップの再開期待しております。
是非 お預けしたい愛器がありますので。
柴又
2010/04/20 23:42
柴又さん

ビリーとは違うバンジョーですか? 全面的に再開できる見通しがなかなかつかないので、お困りでしたらメールで様子教えてくださいね。

2010/04/22 13:44
ありがとうございます。ビリーは元気に吠えております。毎日ハグする必要性を実感しております。
ビリーの兄弟分の雲助も機会あればお世話になろうかなと。
柴又
2010/04/23 00:20

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