デザートローズ・バンジョー

アクセスカウンタ

zoom RSS フレット入れ

<<   作成日時 : 2010/01/03 03:22   >>

トラックバック 0 / コメント 10

元旦くらいはのんびりなんて思っていましたが、訳あって、ギブソンのネックについてスコットからいろいろと教えてもらっていました。またオタク心に火がついてしまった私です。。。


企業秘密にとどめておきたいこともあるので、残念ながらブログという場ですべてお話することはできませんが、聞いた話の中から1つ、きっと皆さんも興味あると思うのでご紹介しておきますね。


それは、ギブソンのあのフレットの入れ方です。スコットをはじめ、個人ビルダーは通常、先にネックのバインディングを貼りつけて、後からフレットを入れますが、ギブソンバンジョーの場合は、先にフレットを入れて、後からバインディングを貼り付けます。「そんなことは知ってたよ」と言われそうですが、なぜ、そうするのかをご存じでしょうか。


それは、当時、あの方法のほうが手間と時間が大幅に省け、大量生産に向いていたからなんだそうです。かつてスコットが在籍していたフェンダーも量産メーカーですから、細かな点は違ったとしても根本的には同じ考え方・やり方でなされていたと思われます。スコットはフェンダーのR&D(早い話がカスタムショップ)に加わる前、ネック製作の責任者だったのですが、ジャズベースやジャズマスターはやはり「先にフレットを入れて、サイドバインディングは後」という手順で作られていました。その頃のスコットは、1時間で45〜60本のペースでネックにフレットを打ち込んでいたんだそうです。ネックにパッパとフレットを入れ、その後ネックサイドをサンディングベルトで研磨すると、同時にネックから飛び出していたフレットがネック面にピッタリに揃うので、あっという間にフレットが完成します。で、その後、バインディングを貼り付けるわけです。


ただ、この方法は、フレット入れのスピードアップという大きなメリットを得られる一方、デメリットもあります。フレットが完了した指板のサイドにバインディングを貼り付けると、その上部は指板の上面よりもわずかに飛び出しています。(この余分が、あの、フレットの端にかぶっているバインディングです) このでっぱったバインディングを指板の高さに揃えるために、スクレイパーという道具を使って手作業で削らなければならないのだそうです。もうフレットが入ってしまっているので、平らに綺麗に削るのはかなり難しいそうですよ。ギブソンバンジョーをお持ちの方は気づいていらっしゃるかもしれませんが、少々ガタガタした削り跡が指板の端に見受けられます。(恥ずかしながら、私はこれまで「ハンマーか何かで叩いたせいでデコボコしてるのかな〜。でもなんで、こんなとこ叩くんだぁ?」なんて思ってました。もっと早く聞いてみればよかった。) 「フレットを効率よく仕上げ、生産スピードを上げるための、小さな代償」ということなのでしょうね。

画像


画像


言っておきますが、上の写真は、わざわざ悪い時代のネックを選んで写真を撮ったわけではありませんよ。 手元にあった1991年か92年頃のRB-4のネックです。戦後、再び品質が回復したことで知られる、俗に言うグレッグ・リッチ時代のものになります。

ステリング・バンジョーも他メーカーとは異なるフレットの入れ方をしているのでフレット交換が少々やっかいだそうなんですが、ギブソンの場合は、まずこの指板のデコボコをできる限り修正したいので、別な意味でまたやっかいなんだそうですよ。 


これ(↓)がスクレーパーで、スコットが1977〜1980年の間に15,000本(!)を超えるフェンダー ジャズベースの指板を仕上げた実物です。1977年から使い続け、今もまだ現役、バインディングを入れた後の指板を削ったり、リゾネーターの表面を削るのにバリバリ使っているそうですよ。画像では分からないと思いますが、汚い字で(笑)「SCOTT 6110 NECK LINE」と掘り込まれています。誰かに貸したらどこへ行ったか分からなくなっちゃったなんてことがないように、みんな、自分の道具すべてに名前を入れてたそうです。

画像





更新: 

言葉が足りないといけないので、3点ほど補足しておきます。

この手法も1つの手法であることには間違いはなく、指板を綺麗に仕上げることは可能であり、現にスティーブ・ヒューバーのようにギブソン手法の完璧なコピーにこだわるビルダーは同じ手法で綺麗に仕上げています。また、ギブソンの指板仕上げのすべてが上の写真と同じ状態というわけではなく、綺麗に仕上がっているネックもあります。ただ問題の1つを挙げるとすると、これはフレット入れの手間と時間を節約するための方法といいながら、最後のスクレーパーによる仕上げはかえってやりにくい面があるので、この工程を急ぎ過ぎると仕上がり状態にばらつきがでやすいことなのだそうです。(事実、世に出た商品がそれを物語っています)


また、今の量産メーカーにとってもこの方法のほうが効率いいかというと、必ずしもそうではなさそうです。製作手順を確立した時のギブソンやフェンダーにとっては、フレットの下部(タング)を1つ1つサイドバインディングを痛めないサイズにきっちりカットして後から入れるよりも、このほうが効率がよいという判断があったに違いありません。しかし現代の量産メーカーにとっては、規格どおりにタングが機械カットされたフレットを用意(入手)することも容易ですし、むしろ昔のようにスクレイパーで後から仕上げをすることのほうが手間がかかる上に、仕上がりに問題が出やすく、メリットは少ないんじゃないかと思います。


最後にもう1つ、ある意味大切なことを補足しておきます。現在大半のメーカーやビルダーが、「先にバインディングをつけて指板を平らにし、その後でフレットを入れる」方法のほうがメリットが大きいと考えるのは、手間や見栄えばかりではありません。(少なくともスコットは、そうです)  この方法だとフレットの端がバインディング上にはみ出す形で入れられるため、フレットの機能幅がわずかですが長くなり、弦がフレットから外れにくい、弦間隔を広めにすることも可能、というプレイアビリティの面でのメリットがあります。(フレットの面取り技術も関係するそうですが)  弦間隔にあまりこだわらない人は気づかずに過ごしているかもしれませんが、フレットの有効な長さが1ミリでも違えばプレイアビリティには大きな差が出るんだそうです。スコットが、今のフレットの入れ方を選んでいるのは、これが最大の理由のようです。

画像









月別リンク

コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
こちらは、また大雪です(笑)
ビルダーのバンジョーにかける熱い思いと手間はかかるが丹念に職人の手によって丁寧に作り上げるのとはうらはらに収益率優先といった発想のビジネス感覚ですね。
こばやし
2010/01/03 11:08
またですか? それはお気の毒です。スコットは絶対そちらへは引っ越さないと思いますよ。 松本はまだ降っては溶け…の状態ですが、この後が心配です。

お客様を待たせていると思うとハラハラして、鬼のマネージャーRはよく「ちょっとぉ、まだなのぉ〜?」とスコットをつっつくのですが、これからはもう少しだけ理解してあげることにします。(笑) 
R
2010/01/03 12:08
なーるほど!です。さっそく、オールド・ギブソンを見ましたら、その通りですが、一度スコットさんにリペアして貰っていますので、余り目立たなくなっている様です。これまた感謝です。

2010/01/03 17:33
> その通りですが、一度スコットさんにリペアして貰っていますので、余り目立たなくなっている様です。

“できる限り”平らに、綺麗にしているそうですが、オリジナルのコンディションによっては限界があるそうです。やり過ぎると、薄いインレイが消えて無くなってしまう可能性があるからです。あとどれくらい厚みが残っているかは表面からでは分からないので、様子を見ながら少しずつ削っていく、神経を使う作業だそうです。

R
2010/01/03 20:56
こばやしさんのコメントを読み返して、1つ思い出したことがあります。

有能な技術者を集め、低下していたギブソン・バンジョーの品質を再び回復させたグレッグ・リッチのことは皆さんよくご存じだと思いますが、彼がギブソンを去った理由をご存知でしょうか。これは彼自身が公に語っていることなのですが、ギブソンCEOから大幅増産を命じられ、しかも従業員数を増やさず増産することを要求されたのが原因だそうです。品質を維持するのが不可能なのは明らかで、それによって、それまでせっかく築いてきた自分の評判に傷がつくのはゴメンだということで、ギブソンを去ったんだそうですよ。(あくまでもグレッグ側の言い分ですけどね)


2010/01/03 21:19
私の愛器がちょうどその頃のRB-4です。確かに指板の縁は所々でこぼこしてます。
悲しいかなフレットの機能幅の違いまでは、入手してから17年たっても気づくことがなかったです。

2010/01/04 00:37
うまく説明できたか心配してましたが、理解していただけたようで安心しました。比較写真もアップしておきましたのでご覧ください。

> フレットの機能幅の違いまでは、入手してから17年たっても気づくことがなかったです。

プレーヤーがそれで支障を感じなければ、それでOKなんでしょう。ビルダーとしては、このわずかな差で可能性が広がるらしいです。スコット曰く、「サイドバインディング後付のネックを15,000本以上作った経験があるからこそ、問題点がよく分かってる。あのスタイルで作るつもりは今後もない。」なのだそうです。

R
2010/01/04 10:33
フレットの長さが1mm長いと言う事は、私にとっても、とても大きなメリットです。

2010/01/04 17:24
よかった〜。

日常生活の中で1ミリの違いなんて無いに等しいですが、スコットの話を聞いていると、1ミリどころか、0.数ミリが大きな意味を持つんだと驚きの連続です。だって、ブリッジのサイズ5/8と21/32の差は約0.79ミリ、21/32と11/16の差も約0.79ミリ。こんな小さな差でバンジョー全体のセットアップもプレイアビリティも変わるなんてすごい世界ですよね。

R
2010/01/04 18:40
ブリッジの0.79mmは、弾き手にとって大きな違いですね。

2010/01/04 21:41

コメントする help

ニックネーム
本 文
フレット入れ デザートローズ・バンジョー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる